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突然始まり突然終わる。







最近繰り返しみる夢は正体不明の追っ手から逃げているものばかりで、俺は学校鞄片手に全力疾走をしている。時折黒服のいかにもまともな御職業の方ではありませんという人に襲いかかられそうになるのを間一髪で避けつつ必死に逃げている。どうして逃げているのかわからないけれど捕まってはいけないことだけが夢の中の俺の頭を占めていて、そんなことを酸素の足りない頭の片隅で考えていたら頭上の歩道橋から飛び降りてきた黒服に肩を突き飛ばされて歩道の上を転がる羽目になった。勢いがついていた分よけいに痛い。長袖を着ていたのが不幸中の幸いだが、それどころではない。黒服の振り上げた拳が直撃する前に体勢を整えなければ、と片膝をついて起きあがろうとしたところで相手の顔面に見慣れたボールが直撃した。

「なにしてんだよ、黄瀬。」
「そうですよ黄瀬くん。余計なものは捨てて、さっさと逃げますよ。」

命より大切なものはないでしょうといつの間にか現れた黒子っちが俺の鞄を掴み、青峰っちにパスをする。いやその中には財布とか定期とか携帯とか自分には必要なものが入っているのだと取り返そうとした時にはもう鮮やかに黒服の腹部に叩きつけられていた。バランスを崩され無様に倒れ込んだ黒服を横目に青峰っちが俺の腕を引いて走り出す。

「ほら、いきますよ。」

余計なものは持ちませんといいながら俺の右側を走る黒子っちが持っているのはバスケットボールとバニラシェイクで、走りながら器用にストローをくわえるその姿につっこみをいれたくなったがやめておいた。左側を走る青峰っちは器用にドリブルをしながら俺より早く走っている。その手にあるのがバスケットボールだけなら格好良かったのだが、生憎彼のズボンのポケットにはお気に入りのグラビアアイドルの雑誌が折り畳まれて入っており、堀北マイちゃんと目を合わせる羽目になった。なんというか突っ込む気力も失せた。俺の大切なものは全部おいてきてしまったなぁと感傷に浸りかけ、でもこの二人がいればいいかと臭いことを思ったのも束の間「そうだ、黄瀬。」振り返った青峰っちが雑誌の入っているのとは反対側のポケットからどう考えても入るはずのない、見慣れたオレンジの球体を取り出しこちらに放った。ちょっと待って。


きのうみたゆめのはなし
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