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好きだと言って届くのなら伝えたかったです。泣きたいくらいに、泣いてしまうくらいにあの人のことが好きでした。この喉が枯れてもいい。大好きだと世界中に叫びたかった。だけど私の叫びは彼には届かないのです。困らせるだけなのです。どんなに願っても、私は彼の思い人にはなれない。そして私は彼の幸福を確かに願っていました。(たとえそのためにわたしがきずついたとしても)

「・・・・・・」
「あっちに、いって」
「馬鹿女」
「馬鹿で結構ですから、どっかにいってください」
「・・・・・・」

伸ばされた手を振り払う。私が欲しいのはあの人で、隣にいる人ではないのです。なにがあの人の右腕ですか。こんなときだけ優しくしないでくださいよ!我儘だってわかってます。わかっていてもどうしようもないことだってあるんです。(わたしが京子ちゃんのかわりになれないように、あなたはツナさんの代わりになれっこないんです!)瞳から流れる雫は地に落ちる前に抱えたバスタオルですべて吸い込む。わたしの中に巣食っている醜い感情よ、全部涙になって流れ出せ。一滴残らず吸い取ってあげる。逃がさないから出てきて、お願い全部捨てさせて。明日には元通り笑えるようにしてください。

「泣くなよ」
「うるさいですよ」
「悪い」

あぁもう八つ当たりをしているだけなんです。どうしてこういうときだけ素直に謝るんですか。あなたいつも自分が悪いときはどうやっても謝らない癖に。なんなんですかもう。涙も引っ込んだじゃないですか。なんの魔法を使ったんですか。この卑怯者!

「卑怯者!」
「は!?」
「卑怯者って言ったんです!」
「なんだそれ、ひとが心配してやれば」
「心配してくださいなんて頼んだ覚えないですよ!」
「っ、かわいくねぇな」

言いながら、頭の上に手が乗せられる。心地よい重さをもったそれは、不器用に髪を撫でる。また泣きそうになって膝を抱える手に力を込めれば「げ」とこの場には不似合いな呻き声が聞こえた。次いで頭皮が引っ張られる痛みに思わず悲鳴を上げると「動くんじゃねぇ」と焦った声が頭上から降ってくる。「まさか指輪に髪の毛を巻き込んだとかいうんじゃないでしょうね!」叫べば顔を見なくてもぎくりと身を強張らせたのが分かった。ああもういっそこの長い髪を切ってしまおうか。なにもかも彼のせいにして。


卑怯者は私の方



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