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いくらなんでも多くつくり過ぎてしまったかもしれない、と気付いたのは煮物の出来上がりを確認した後だった。鍋いっぱいのそれは一人暮らしには多すぎて、何日食べるつもりだったかなと自分で自分に問いかける。できてしまったものは仕様がない。大家さんにお裾分けしようか、それとも奈々ママの所に持っていこうか、そんなことを考えていたらけたたましく電話のベルが鳴っていた。濡れた手を布巾で拭いて慌てて受話器を取ると聴きなれた幼馴染みの声が機械越しに自分の名前を呼んだ。

「ランボ?」
「イーピン、お願いがあるんだけど」
「何かな」

いきなり何だろうと言葉を待つと、彼は歯切れ悪く頼みごとを口にした。

「日本についたんだけど、今晩泊めてくれませんか」
「そういうのってせめて向こうを発つ時に言っておくものだよ!」
「ゴメン」
「まぁいいや、いま何処にいるの」
「・・・並盛町」
「まったくもう!」

呆れながらも「仕方ないなぁ」と許している自分はきっと甘いのだろう。奈々ママの所でご飯を食べられるか聞いてみようなんて考えてしまっているのは作り過ぎた煮物を悪くせずに済むことがわかったせい。それ以外の理由なんてないのだ。「イーピン?」と恐る恐る訪ねてきたランボに「とりあえず家に来て」と声をかけ「あ、気を付けてね」と付け足してから電話を切った。予定外の訪問者のお陰で夕食が楽しくなりそうだと期待している胸は高鳴る。だけどそれがランボのお陰だと考えるのはどうしてか癪だった。

突然の来訪者

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好きだと言って届くのなら伝えたかったです。泣きたいくらいに、泣いてしまうくらいにあの人のことが好きでした。この喉が枯れてもいい。大好きだと世界中に叫びたかった。だけど私の叫びは彼には届かないのです。困らせるだけなのです。どんなに願っても、私は彼の思い人にはなれない。そして私は彼の幸福を確かに願っていました。(たとえそのためにわたしがきずついたとしても)

「・・・・・・」
「あっちに、いって」
「馬鹿女」
「馬鹿で結構ですから、どっかにいってください」
「・・・・・・」

伸ばされた手を振り払う。私が欲しいのはあの人で、隣にいる人ではないのです。なにがあの人の右腕ですか。こんなときだけ優しくしないでくださいよ!我儘だってわかってます。わかっていてもどうしようもないことだってあるんです。(わたしが京子ちゃんのかわりになれないように、あなたはツナさんの代わりになれっこないんです!)瞳から流れる雫は地に落ちる前に抱えたバスタオルですべて吸い込む。わたしの中に巣食っている醜い感情よ、全部涙になって流れ出せ。一滴残らず吸い取ってあげる。逃がさないから出てきて、お願い全部捨てさせて。明日には元通り笑えるようにしてください。

「泣くなよ」
「うるさいですよ」
「悪い」

あぁもう八つ当たりをしているだけなんです。どうしてこういうときだけ素直に謝るんですか。あなたいつも自分が悪いときはどうやっても謝らない癖に。なんなんですかもう。涙も引っ込んだじゃないですか。なんの魔法を使ったんですか。この卑怯者!

「卑怯者!」
「は!?」
「卑怯者って言ったんです!」
「なんだそれ、ひとが心配してやれば」
「心配してくださいなんて頼んだ覚えないですよ!」
「っ、かわいくねぇな」

言いながら、頭の上に手が乗せられる。心地よい重さをもったそれは、不器用に髪を撫でる。また泣きそうになって膝を抱える手に力を込めれば「げ」とこの場には不似合いな呻き声が聞こえた。次いで頭皮が引っ張られる痛みに思わず悲鳴を上げると「動くんじゃねぇ」と焦った声が頭上から降ってくる。「まさか指輪に髪の毛を巻き込んだとかいうんじゃないでしょうね!」叫べば顔を見なくてもぎくりと身を強張らせたのが分かった。ああもういっそこの長い髪を切ってしまおうか。なにもかも彼のせいにして。


卑怯者は私の方




「ねぇ、まだ復活しないの。骸ちゃん」
「もう少しかかりそうですね」

いい加減足が痺れてきたしこの体勢にも飽きてきた。少しだけ呆れを混ぜて、けれどあくまで軽い感じに問いかけると他人事のような返事が返ってきた。もうどれだけの時間、私は骸ちゃんに膝枕をしているのか。そろそろ動きたい。時は金なり。これだけの時間があったらどれだけの金が稼げたかしら、と頭の中で電卓を取り出す。用意しただけで止めた。馬鹿馬鹿しい。

「骸ちゃん」
「すみませんねM.M。でも安心してください。ちゃんとこの分の報酬は払いますよ」
「うん」

そもそも骸ちゃんが人前で弱いところを見せるなんて珍しいことだ。一昔前なら地面から空にむかって雨が降るくらい信じられないことだった。最近は当り前のように他人を頼り頼られるようになってきたが、それでもプライドの高い骸ちゃんはなかなか弱音を吐かない。人間味が増した、と言うべきなのかは疑問。ただ彼にも護りたいものが増えてしまったのだろうとは思った。犬や千種やあの少女にボンゴレ。なんだかんだ言って、彼らのために神経を磨り減らしているのは見て取れる。

「呆れたものよね」

アンタも私もいつから自分が一番じゃなくなったのかしら。


愚か者と嗤えたら



昔書いていたらしきものを発掘。
黒い綱吉が駄目な方は引き返してください。






「ねえ、そんなにすべてを拒絶して憎んで、疲れない?」

軟禁状態の俺の前に唐突に現れたボンゴレ10代目候補は、開口一番とんでもないことをのたまった。ふざけるな。お前がそれをいうのか。

「そう思うなら、さっさとくたばれ」
「それは俺に?それとも9代目に?」
「どっちも。何しにきやがった。俺は手前なんて顔もみたくねえ」
「あっはっは。嫌われたもんだよね」
「わかっているならさっさと失せろ」
「質問に答えてくれたらね」
「どうだっていいだろうそんなこと」
「よくないよ。俺はボンゴレにいろんなものを奪われた。お前だってそうじゃないのか」
「奪われた?お前が?」
「だってXANXUSは10代目になりたかったかもしれないけど、俺は逆だったからなりたくなかったよ。こんな物騒な職」
「はっ」
「気付いたら、後戻りできないようにされていたけどね」

これは誰のせいなんだろうね。にっこりと笑うそいつは指輪をはめたときに垣間見た初代に似ていた。以前では見ることのできなかった笑い方に含まれた計り知れない憎悪に背筋に冷たいものが走る。こいつをこんな風にしたのは誰だ。

「XANXUS。俺はボンゴレをぶっ壊すよ、お前はどうする」


狂った歯車


今日も楽しかったな。幸せです。そんなことを思いながら眠りに落ちる。意識を手放そうとしたときに、半分既に眠っている耳が優しい旋律を聞いた。英語ではなくましてや日本語でもない、知らない言語で紡がれるそれは子守唄だろうか。ビアンキさんにしては高い声だ。必死に眠気と戦いながら重い瞼を持ち上げて歌い手を探す。薄暗い部屋の中、テーブルに肘をついたM・Mが目に入った。そうか、彼女の声か。そういえばハルはM・Mが何処の国出身なのかも知らない。今度聞いてみようかな、そんなことを考えながら優しい歌に聞き惚れる。
「きれい、ですねぇ」
思わず呟けば、M・Mは起きているとは思わなかったと言わんばかりに困惑した表情でこちらを見た。旋律が途切れてしまったことが残念で、黙って聞いていれば良かったかなとほんの少し後悔した。
「歌の意味はわからないですけど、素敵な歌です」
言って、くっつこうとする瞼を持ち上げて彼女を見る。余程私が眠そうに見えたのか、M・Mは「眠っちゃいなさいよ」と苦笑いを浮かべた。きれいな笑みを見届けてから目を閉じる。(寂しそうにみえたのは気のせいだったんでしょうか)再開された旋律に、疑問は打ち消される。穏やかな旋律はゆらゆらとまどろみに溶け、心臓の音と混ざっていく。緩やかに夢の世界に落ちる寸前に「おやすみなさい」と淀みない綺麗な日本語が聞こえた。



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