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ベルフェゴールとフラン




「…先輩」
「………」
「ベル先輩、ミルクティーでいいんですよね?」

向かいの席に座っている上司(と呼ぶのもなんだか癪だけど)頬杖をついてぼうっとしている先輩に声をかける。オーダーを聞きに来たウェイトレスが困った顔をしている。先輩はといえば「決まってんだろ」と偉そうに言い放った。どこまでも尊大な態度。さすが王子(仮)。例え王子だろうと一般マナーくらい守って欲しいと思うのはミーが贅沢なのか。ただでさえ黒づくめの服装でティアラとカエルのかぶり物の二人組というのはとてつもなく目立つのだから、面倒なことは勘弁してほしい。
さっきみたいに、先輩は時折俺を通して誰かを見ている。(ミーはその人を特定しているのに誰か、という呼び方をするのも可笑しな話かもしれない)この人だけではなく、ヴァリアーの幹部はみんなそう。ミーを通して前任の幻術士を見る。重ねられるのはあまりいい気分ではないけれど、不服だと訴えてもおそらく流されるだけだろうから口には出さない。第一面倒くさいことはしたくない。頭重いこの被り物はずしちゃダメかなぁと考えていたら先輩がおもむろに口を開いた。

「お前なに注文したの」
「コーヒーと苺のミルフィーユ」
「なんでココアじゃねぇの」
「ミーは甘いの苦手なのでー」
「じゃあなんでケーキ頼んでるんだよ。矛盾してんだろ」
「どうして甘い物食べるのに甘い飲物をのまなきゃいけないんですかー」

嗜好にまで口出しされてたまるか。そうこうしているうちに頼んだメニューがテーブルの上に並べられる。一度は黙り込んだ先輩が「今度からお前飲み物はココア頼めよ、これ命令な!」と偉そうに言ったのでミルフィーユを叩きつけてやろうかと思ったけれど勿体無いので辞めた。


気付かないふりをして


暗殺部隊はみんな口にはしないけれどなんだかんだでマーモンのことを引き摺っているといい。
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